美しさと はかなさと
「もうさ、みんな好きに過ごしなよ」
先週日曜の朝
菜箸を持った、ぴょこはキレ気味に言った
この日は、サイゴの花見チャンスだった
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3月半ば
ぴょこは、オトウト吉に相談した
「家族揃っての花見はサイゴかもしれない
近場の花見スポット探すの頼む」
ところが、花見日和第1週目
身軽な親友と、甲斐の国へ日帰り温泉へ出かけた
来週は、頼むぞ
✿
そんなこんなでラストチャンスの日
家族の反応
-ママ吉:前々日、仲間で花見した
夕方に用事があるから、ごにょごにょ
-パピィ:駅前の桜祭りに行くつもり
(たぶん、酒目当てだな)
-オトウト吉:前日まで泊り出張だったので
ゆっくり寝たい
家族も他人だな
でも、ま、両親ともにジブンの用事があるのは
喜ばしいっていっちゃー喜ばしい
怒り半分、皮肉半分ででたのが
冒頭のコトバ
ぴ「ネットに”花見できませんでした弁当”さらすから完成させる」
前夜に仕込んだ筑前煮
それと、唐揚げ揚げて
アスパラベーコン巻いて・・・
無念のナミダをにじませながら、どんどん作る
ふと、ママ吉が横に立って手伝い始めた
「ネットより、リアルの方が大事よ」
知っとるわい
だって、リアルに行くヒトいないやんか
「家の近くで花見しようよ、ね」
仕上がったお弁当を片手に、改めてパピィを誘う
パ「え!お弁当作ったの?」
近くの公園か川べりで花見弁当食べよう
パ「ってことは、ハイキングってことでいいかい?」
・・・わざわざ、いい直すことかいな(=ω=。)
パ「今日、暖かいんだろ?すぐ、支度するよ」
出張疲れのオトウト吉は、爆睡中なので留守番だな
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足が遅いから・・・と数分前に出かけた両親
どこまで行ったかなー
ん?
なんと、家から目的地までのマイナス20m地点にいた
ママ吉は先にでるパピィに、家をでて右といったのに
左へずんずん行ったパピィ
それを追いかけるママ吉
そんな、ドラマがあったなんて
体力温存でお願いします(。uωu)
ともあれ
中学の登下校で歩いた遊歩道
満開の桜のアーチをくぐった
その頃は友だちとコイバナに花を咲かせ
夢や希望がいっぱいだった
甘酸っぱいなー(*˘︶˘*)
今は、末期がんの両親と
胸いっぱいのお花見だ
パ「近くにこんなにキレイな花見スポットがあったなんて
ママ吉はスゴイよく知ってるな」
マ「ろん太の散歩でよく来たからね」
遊歩道のつきあたりに、大木の桜並木
パピィは一つずつ見上げ
息を整えながら川べりの遊歩道へ向かった
柔らかい新緑の色
菜の花のいり卵みたいなカワイイ黄色
そして
今日まで待ってくれていた
淡い無数の花びらの桜
どれもこれも
写真や動画に収めた
ここで、お弁当にしようか
川沿いの遊歩道の脇、桜の木の下
誰もレジャーシートやお弁当は広げていないけれど💦
ここが今年のぴょこ家の花見会場
パ「上野や御苑じゃ、混んでてこうはいかないよな」
もう少しで
”花見できませんでした弁当”として紹介されそうになった弁当
花見実行確率半々だったのでシンプル
ママ吉、パピィは箸を忙しくうごかした
パ「やっぱさ、外で食べるっておいしいな」
マ「いつもお粥なのに、パピィ、おにぎり頬張っているよ」
パ「オレは、全種類1つずつ食べたよ」
宴もたけなわの頃
一眼レフを手に、怪しい動きをする人物が遠くに現れた
LINEが鳴った
川の反対側、柵越しに写された
『怪しい野宿している風の3人連れ』
オトウト吉が対岸からコノ宴を撮ったものだった
念願の4人の花見
いつぐらい振りだろう
小さいころは、春・GW・秋
ママ吉がお弁当を作り、行楽を楽しんだものだ
それが、ぴょこたちも大きくなり
家族より友だちや彼氏の比重が大きくなり
出掛けなくなった
今年だって
去年の春の状況と同じだったら
4人で花見することはなかっただろう
がんは、ニクイ
でも、突然死だったら
パピィの動脈瘤が発見前に破裂していたら
こんな機会をもつことなくお別れだっただろう
帰宅後、
荷物の整理が終わらないうちにLINEが鳴った
パ「又来年も
4人元気でお花見したい」
パピィの部屋へ向かった
ベッドに横たわりながら
目が真っ赤になっていた
パ「来年さ、オレ、どうなっているのかなって」
予後について、理解しているかなんだかわからなかったパピィ
「オレは来年はいないみたい」
半ば冗談でヒトに話したりしていたが
実は、不安に押しつぶされそうだったのか?
散る桜に
ジブンのイノチを重ね合わせたのか?
マ「予後なんて、今までの統計論でしかないから」
ママ吉もやさしく話しかける
熱いドリップコーヒーを黙って出した
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「昨日は、花見楽しかったな」
朝食の器を洗いにきたパピィが言った
そうさ
4人揃ってぴょこ家なんだからさ
長く続くように、自己管理も頼むぜ