泊まるかどうか・・・
昼食が運ばれてきた
パピィに出すか迷ってたみたい
確かに食べられないよなぁ
でも、酸素吸入で唇やのどが渇いているかも?
看護師さんが脱脂綿にほうじ茶を含ませ
パピィの唇や歯を濡らした
パピィの口がもぞもぞ動いた
これが、サイゴの食事になった
酸素マスクをズラして
パピィの唇にタップリ、ぴょこ愛用のリップ美容液を塗る
ぴょこの素ユビにのせて丁寧にヌリヌリ
あー、病気じゃなかったら
死にそうじゃなかったら
ゼッタイやんないなぁ
テラテラになったパピィの唇
これで、酸素吸入の乾燥から守られそうだ
2:00pm
突然、埼玉に住むパピィ姉が面会に来た
お姉さんを目で追い
問いかけにうなずいたりもしたが
大半は眠っていた
パピィ姉が顔を微笑みながらのぞき込む
「良く眠ってる」
本当は
本当は、それがスヤスヤ寝てるのではなく意識低下で
死期が迫ってきているのを察していたと思う
3週間前に面会に来た時とは
全然様子が違うパピィ
談話室へ移動
このタイミングで面会にきてくれて助かった
兄弟に余命1か月というのは伝えてあったが
最終的にどの段階で連絡したら良いか迷っていた
そして、葬儀の確認もできた
-ごく身内だけの家族葬
-告別式のみ
-お布施の金額
-戒名はどうするか
-葬儀会場の場所
まだ、パピィは息をしていて
モウロウとしながらもうなづいたりはできる
だから、まだピンとこなかったけれど
・・・でも、後々困るしな
「またね・・・」
パピィ姉は弟にサイゴの挨拶をした
3:45pm
再び家族4人の時間
手を握ったり、足をもんだり、話しかけたり
貸し出された簡易ベッドに交替で横になる
椅子に座り、曇り空を眺めながら
喪主挨拶の下書きをしたりもした
今夜は誰が病室で付き添おうか?
「オイラ、泊まるよ」
オトウト吉が名乗り出た
必要物品の買い出しから戻ったオトウト吉
どーんとコンビニ袋2つ分
チキン、唐揚げ、とろろそば、おにぎり、ジュース・・・
おいおい
お泊り保育じゃなくてよ
でも、確かにこの時はまだ切羽つまってなかった
6:00pm
「パピィー」
「あ”ー」
パピィは口呼吸の合間に返事をし、うなづいてくれた
ぴょこの記録では
これがパピィとのサイゴの会話になってしまった
スーーーーーーー
オキシメーターをつけた右手が外へ開き
ベッド柵で止まった
丁度、パピィの右側の簡易ベッドにいたぴょこ
そっと手を握ってみる
ひんやり冷たい
でも湿っぽい
この右手でペンを握り、40数年家族を養ってきた
脳梗塞で右手がやられたとき
さぞ無念だったろう
パピィが大学合格祝いにくれた時計をして
夕食がドア口まで運ばれかかったが
バイタルを取りに来た看護師さんが手を上げて止めた
心拍数:99
血 圧:77/46
SpO2 :92
呼吸数:22
尿は、昨日4:00pmに少量出たのが最後らしい
6:35pm
「また明日朝来るね」
「オトウト吉が今夜一緒にいるよ」
簡易ベッドに横になってるオトウト吉
パピィはオトウト吉のいる方向へ首をゆっくり動かした
状況は分かっているみたいだった
よし
明日朝早く来て、オトウト吉と交替しよう
ママ吉も休めなきゃいけないな
救急搬送からの余命宣告
心身共にすり減る激動のひと月
帰り際、ママ吉が夜勤の看護師さんに声かける
「もう、昨日お別れの挨拶もできて、覚悟もしているから
例え、サイゴに立ち会えなくても大丈夫です
今夜はムスコが泊まります」
もし、あと4時間半のイノチと知っていたら-----
うー
タラレバ論言っても仕方ないけどさ