❤乳がん4ママ+膵がん3パパとのつれづれ日記❤

~乳がん骨肺肝転移の母と膵がん治療不可父とヨガ好きアラフォーぴょこ~2019年1月より両親ともがんに・・・

【膵がん余命1か月】28日目 「いろいろありがとう」

先に挨拶を済ませたパピィ

 

梅雨の雨の止み間

個室の広い窓から

厚い雲がゆっくり流れているのが見える

 

ママ吉、オトウト吉とぴょこ

そして真ん中に横たわるパピィ

状態は悪くなりつつも

いつもの面会であるつもりだった

 

夕食を運んできてくれたのは看護主任さん

嚥下の認定看護師でもあるらしい

パピィの希望で3食パン食だが

パンは、嚥下能力低下しているパピィには危ないという

「パピィさんが要らないといえば

無理にお食事はとらなくてもいいですよ」

そう前置きを言った上で食事のポイントを教えてくれた

 

誤嚥を防ぐポイント🍴

-しっかり覚醒時に食べさせる

-しっかり体勢を立てる

-ゼリー類は薄くスライス状にカットする

-汁状のものはトロミをつけて出す

 

「ママ吉さん、ちょっと・・・」

キーパソンのママ吉が室外に呼ばれた

 

看護主任さんからこう話があったそうな

-状態が良くない

-尿が昨日からでていない

-ストンと急変もありうる

 

簡易ベッドの貸し出しもできるので

家族はいつでも泊まっていいと言ってくれた

そして、看護師でなるべく多く見まわるが

その間にフッと亡くなってしまう可能性があるかもしれない

なるべく、家族がサイゴに立ち会えるよう

急変のサインをくみ取るようにするが、と

 

ママ吉はこう答えたそうな

「フッといってしまうのは、あり得ること

 家族は、サイゴに立ち会えなくても構わない」

 

そう答えたものの、憔悴して戻ってきたママ吉

その様子を見て、状況をくみ取ったオトウト吉とぴょこ

 

ゼリー2口と、トロミをつけたほうじ茶を3口飲み

歯を磨いて、ベッドをフラットにしたパピィ

食事前まで口を開けて寝ていたが

今は、宙を力なくじっと見つめている

 

呼吸が苦しいのか

時折、歯を出して胸をつかって息している

足を伸ばしたときは「痛い」と声を漏らす

 

麻痺のある右手を宙に上げる

ママ吉が両手で包むと

「・・・ありがとう」

弱弱しい目

でもしっかり見つめていう

「ママ吉、いろいろ、ありがとう」

「パピィこそ、ありがとう」

「今まで、たくさん稼いできてくれてありがとう」

 (↑パピィが喜びそうなコトバ)

それを皮切りに、子どもたちにも順々に挨拶をいうパピィ

「・・・ぴょこ、ありがとう」

「オトウト吉・・・、ありがとう」

「パピィも、ありがとう」

ありがとうは、それぞれに2巡も3巡もした

 

いつもは、すぐ目を閉じるパピィ

ずっと、目を開けている

時々宙を見つめるも、しばらくすると家族の姿を追う

オトウト吉が、小さく音楽をかけた

パピィと、ママ吉の想いでの曲

シバの女王

大好きな曲なのに

今回の入院中は途中でもういいと聴くのを止めたが

今日はじっと聴いている

ママ吉がいった

「また、一緒になろうね」

 

挨拶がすむと呼吸が苦しいのだろうか

「・・・酸素したい」

珍しくパピィがいう

呼吸苦に効く薬はなく

”楽になるかもしれないのは『体勢か酸素』”

そう看護師さんに言われていた

ママ吉がナースコールを押す

 

パピィが言った

「・・・死ぬのが下手だなぁ」

肩で息をしてもう一度言った

「死ぬのが下手だ・・・」

 

駆けつけた看護主任さん

パピィが酸素希望したと伝えると驚いてた

看「パピィさん、我慢強いから今まで言わなかったけれど

 ツラいですよね、準備します」

マ「・・今、家族ヒトリヒトリに挨拶もしました

 それで、『死ぬのが下手だな』とも・・・」

看「パピィさん・・・

 みんな、上手にはいかないですけど・・・

 家族の皆さんが毎日来てくれて、パピィさんはシアワセですよ

 少しでも楽になるようにしましょうね

 痛みはどうですか・・・そうですか、痛み止めもしましょう」

 

”酸素1L” + ”ロピオン静注” 追加

 

血圧  102/63

心拍数 90~110 いつもより早い

 

「痛み止めは10分くらいで効き始めると思います」

点滴台に白い液体の入った袋が追加された

 

パピィは時々顔を歪め、宙を見つめたまま

20時過ぎた病棟

個室

「目が覚めていると、気になって帰れないよね・・・」

どうするか、決めかねている中

看護師さん2人がオムツ替えにきてくださり

家族は誰もいなくなった談話室で待った

替え終わると、看護主任さんが談話室まで声をかけに来てくれた

「下痢はでているのですが

 やはり、尿はでていません」

 

泊まるか、どうするか

 

今日は、帰ることにした

いつ急変するか、分からないし

急変後はやるべきことが目白押しだ

家族の体力温存を優先にした

 

パピィを見た

お尻もさっぱりして気持ちが良いのだろうか

目を閉じて寝ていた

 

パピィは、雰囲気を感じ取って

サイゴの挨拶を意識のあるうちに言ったのだろうか?

それとも、ジブンのカラダがもう長くないと感じているのだろうか

 

いつもより、みつめている時間が長いのは

サイゴに目に焼き付けたい、と思っていたからなのだろうか

 

・・・聞けないけどさ

 

いつも通り手を握って挨拶してから帰りたい

その気持ちをこらえ

3人で病室を後にした